『柔かい月』イタロ・カルヴィーノ、脇功訳、河出文庫
こういうのを書いてもいいんだなって。原題は「ティ・ゼロ」つまりt0のことだろう。本文にそういうのが出てくるから。
地球の月に対する優越性、ありとあらゆる可能性の検討(ボルヘス的なものも含まれる)。こういういのもありなんだな。っていうか今まで読まないで損した気分。そういう本が世の中には満ちあふれていて、そのほとんどを読まないうちに死んでいくのだろう。
読書家という人たちはチェーン・リーディング(そんな言葉があるかどうか知らないが)できるんだろうけど、わたしの場合脳という名の消化器官が脆弱なので、たとえ読了したのが朝のうちであったとしてもその日はもうそれ以上本を読めない(時々読めることもあるけど)。なんか、一度眠ってリセットしないとだめみたいだ。
まあそんなことはどうでもいいんだけど、まだあんまりカルヴィーノを読んでいないわたしにはこれ以上書けることがない。何しろ文庫や新書サイズの本ではあまり手に入らなかったから。だから今回河出で何冊か出してくれるのは、とても嬉しいのだが、薄っぺらなのに850円もするところが個人的には辛い。薄っぺらなのは体裁であって、中身はなかなか歯ごたえがあってすばらしい。