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2004.06.02

『フェチ楽園考 超官能の世界』いその・えいたろう、ちくま文庫

 私はアマチュアの小説(というか小説らしき何ものか)書きでもあるのだが(興味を持たれた方はプロフィールのURLから飛んでみてください。そんな人いないと思うけど)、いま、とある小説を構想中で、その小説を書き始めて困っていた(フェチが関わってくるのだが不案内なので)ときに、書店でこの本を偶然見つけた。というよりも、この本がおいでおいでをしていた。

 文庫書き下ろしで、可能な限り最新の情報も合わせて詰め込んだ本書は、フェチ(呪物崇拝のフェティシズムじゃなくて、いわゆるフェチ。性的倒錯のほう)のあらゆる様相をかいま見せてくれる。

 フェチビデオばっかり扱っているある店のワンフロア、使用済みの女性の下着をタンス一杯にしまい込んでいる老画家(新品と交換してもらうんだそうだ)、不気味なまでの女装、髪フェチ、靴フェチ、獣姦、身体改造(これで『蛇とピアス』は読まなくてもいいやと思った)、おならフェチ、剃毛(あそこの毛を剃るのだ……(泣))、W&M(正装した女性が水に濡れたり泥に濡れたりするのがいいらしい。海外にはたくさんファンがいるとか……(溜息))。

 インタビューも結構あるのだが、どの人も自分が変態ではなく「フェチ」であるという誇りと自負を持っている。基本的に明るい。自らの欲望に忠実で、経済的には苦しくとも本当に好きなことをやっているのだから幸せそうだ。そしてどの人も、暴力的ではない(SMは項目としては取り上げられていないが、あれも暴力とは違うだろう)。

 言ってみれば、「ちょっと変わった趣味にのめり込んでしまっている人たち」なのだ。こんな人たちばかりなら、世の中も平和になるし、子供も「大人は嘘ばっかり付く」なんて生意気なことを言えなくなってすべて丸く収まる……かどうかは知らない。

 ひとつだけ生意気なことを言わせていただければ、「ゴスロリ」は微妙に外していると思う(というか、わたしの方が詳しいと思う)。でも、著者の経歴と年齢を考えれば、むしろここまで正鵠を得た批評をしていることを賞賛したい。

 私のように不案内な読者をフェチの現場に連れて行ってくれる本書は、入門書(……何の?)としても最適だと思う。何といっても、その生々しさが本書の最大の魅力であると思うし、類書にはあまりないものではないかと思われる(そりゃ、フェチ専門書はまさに生そのものだろうけど、敷居が高すぎる……(泣))

 あとひとつだけ、正直に告白すると、読んでいて何度も泣きたくなった。偉そうな言葉を使えば、「人の業はここまで深いものなのか」。もっと正直に言うと、「もう勘弁して(;_;)」

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