『人に言えない習慣、罪深い愉しみ』高橋源一郎、朝日文庫
高橋源一郎の書評集はいったい何冊読んだだろう?出ただけ全部読んだはず。
あと、講談社文芸文庫と学術文庫の柄谷行人の本も、八、九割読んでいる。本の読み方はこの二人の著書から七十パーセントくらいは習っているんじゃないだろうかという気がする。滅茶苦茶偏っている。優れた批評家は他にもたくさんいるのに。江藤淳とか。最近なら斉藤美奈子(もっと読みたいのだが、なにしろ文庫になっているものが少なくて……場所とお金の問題と、あとやっぱり趣味の優先順位かな)。
で、この本についてどんな感想を書いたらいいのだろう?書評に対する感想?
不思議なもので、書評集に取り上げられている本を実際に手にとって(あるいはウェブで検索して)、そして購入に至る、という例はそんなに多くない(だってこの書評集だけだって百冊以上の本が取り上げられているのだから、というのもあるけど、それとは別に)。読んだ中で、頭の中に引っかかった何冊かが、たまたまリアル書店に立ち寄ったときに手招きをしていたり、ウェブ上で全くの偶然がいくつか重なって、その本が輝いて見えたりとか、そういうことの方が多いような気がする。
たぶん、私にとって意味のありそうな本(分野を問わず)が頭のどこかに引っかって、「時」が来ると私の目の前に姿を現すのだろう。だから、面白そうだと思った本があっても特にチェックすることはしない。
ところで、この本とは直接関係ない話だけど、不思議なことだが、読んだこともない本の書評を読んでいるだけでも、本の読み方、というのがだんだん分かってくるような気がする。気のせいかもしれないが。すごく若い頃は知らなかったのだが、本を読むのにはそれなりのテクニックが必要なのは確かだ。テクニックに応じて本は自在にその姿を変える。これは若い頃に読んだ本をもう一度読んでみると分かる。感性が変わったのではなくて、圧倒的に読みとれる情報量が増えていることが実感できる。実感できなかったら……ちょっと悲しいかもしれない。
まあそんなことはどうでもいいんだけど、高橋源一郎の新しい書評集が出たら、きっとまた買ってしまうんだろうな、というのは確かなことだ。食べるのに困っていたとしても。
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