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2004.08.04

『のだめカンタービレ #5』二ノ宮知子、講談社

 前半は学園祭におけるSオケとAオケの対決(?)Sオケは前夜祭で「ラプソディー・イン・ブルー」を演奏、Aオケは最終日に千秋がピアノ、シュトレーゼマンが指揮の「ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番」。果たして対決の結果は……。

 そして後半は千秋の演奏を聴いたのだめと、千秋の元彼女多賀屋彩子の暴走(?)。

 あと、いちばん最後に千秋と指揮者ヴィエラとの出会いの話、飛行機恐怖症になった原因を描いた特別編が収録されている。

 ちなみに4巻のネタバレの部分でも書いたのだけど、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は素人の私が聴いてもとんでもない難曲だ。たぶん、ピアノのパートを弾くだけでもたいへんだと思うのだが、それがオケと複雑に絡み合ってくる。ヘタクソだろうとなんだろうと最後まで弾き通すだけでもかなりの技量が要求されるのではないだろうか。

 私の手に入れたCDのピアニストは、信じられないことだが15歳でこの曲を弾いたというのだから、世の中にはとんでもない人たちがいるものだ。

 しかし作者も2ヶ月もラフマニノフを聴いたというのだから、それはそれですごいことだと思う。「好きなところが描けませんでした。」というコメントがあったが、それに見合っただけの物は描けていたと思います。だって読んですぐにアマゾンに注文しちゃった私のような読者もいるのだから。

 ちなみに、他の曲のCDはまだ集めてません。前にも書いたかもしれないけど、うちにも60タイトルくらいのクラシックのCDはあるんだけど、見事に全部はずれ!全部は無理かもしれないけど気に入ったのから順に(聴かなくても好きな曲というのは読んでいれば分かるものだ)集めていきたいなと。巨匠(シュトレーゼマンのことじゃないよ)の廉価版もいいけど、今回買ったみたいな比較的新しい人の演奏のCDのほうが聴いてみたい、というのもありますね。

 話がどんどん逸れていく……まあ構わないでしょう。

 以下あらすじ、あるいはレビュー(?)。もちろんネタバレ。

 [bk1へ]

 千秋はAオケでシュトレーゼマンとピアノ協奏曲をやることになったので、Sオケは仮装オーケストラをすることに。ただし指揮者であるはずのシュトレーゼマンも千秋もAオケにかかりきり。そこへ登場したのが、前回の定期演奏会でAオケの指揮をして大ブーイングを喰らった大河内くんが登場。メンバーが揃って仮装の準備に取りかかったのだが……

 一方千秋はシュトレーゼマンから「もだえるように」演奏しろなどという指示を受けて困惑していた。でもシュトレーゼマンが意図していたのは、単純な意味での観客への「魅せ方」だけではなかった。

 学園祭前夜祭のSオケの仮装はのだめの友人で峰のファンだったマキちゃんの仮装がなかなか壮絶な代物だったので(マキちゃん可哀想(笑))、峰がそれを拒んで紋付き袴と着物のオケになった。まともに仮装を完成させたのは真澄とのだめだけ。真澄はドレス!のだめは、マングース……のだめ以外の誰にもマングースである必然性は理解されなかった……のだめワールド炸裂!(笑)

 Sオケにはピアノ課の有志もピアニカで参加していて、のだめはマングースでピアニカ。

 千秋はSオケが活動していることを知らなかったのだが、偶然ポスターを見つけて帰って練習するのをやめてSオケの自称「伝説のステージ」を見ることにする。

 ステージの明かりが消えて、オケのメンバーがステージに上がり始め、やがてチューニングが始まるが、ピアニカが混じっているのに千秋は気付く……(もちろんピアニカはチューニングなんてできない)。

 で、ステージにスポットライトが当たるとそこには着ぐるみのピアニカ奏者が。ソロでメロディを奏で始めたとたんに、千秋はそれがのだめであることを悟る……

 Sオケは和風?ビッグバンド編成でラプソディ・イン・ブルーを演奏。観客には大受け。しかし千秋は一人感心していた。アレンジの良さ、そして「魅せる」ということに。もちろんSオケなのでそれは極端ではあるのだが。

 千秋はSオケに触発されて「オレも自分を信じてオレらしい演奏をすればいい」と確信する。

 学園祭最終日、控え室で出番を待っているとき、千秋はシュトレーゼマンに「オレはオレなりの演奏をしますから!」と言う。するとシュトレーゼマンは「当たり前でショ そんなこと」とあっさりと言ってのける。千秋がじゃあそれまでのもだえろだの色気だのは何だったんだと言うと、「それはもういいデス もう十分……」とシュトレーゼマンは答えるのだった。困惑する千秋。「これで日本ともしばらくお別れですから」

 そして二人は舞台に向かうのだった。

 一方、このステージには「クラシック・ライフ」記者の河野けえ子(夏のニナ・ルッツ音楽祭で千秋を見いだした記者。河野けえ子はすっかり千秋のファンになっていた。才能もだけどルックスか(笑))と、音楽評論家の佐久間学も見に来ていた。

 ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番はピアノの独奏から始まるのだが、この場面を読んだ(見た)ときから、もう、ものすごくかっこよくて、作者が楽譜の一部や記号を書き込むことによって、聴く前から、つまり読んでいる(見ている)その瞬間からあの緊張感に満ちた導入部が(もちろん音としてではないけれども。楽譜読んで音が分かるほどではないので)聴こえてきて、それが徐々に盛り上がっていき、そしてオーケストラが合流する、あの部分にすっかり感動してしまった。あとでCDを聴いたら、全く描かれていた通りだった。このとき私は作中の聴衆と一体化していたのだろう。

 曲は第2楽章、第3楽章へと進んでいき、千秋は思う「いやだな もうすぐ終わりだ もっと…… 教えてほしいことがあった もっと聴いて 感じていたかった この人の音楽を――」

 そして演奏は聴衆に涙を浮かべさせるほど感動させ、幕を閉じた――

 巨匠と千秋が控え室でソファに寝ころびながら会話しているとき(互い違いの向きに横たわっているところが絶妙!)、Sオケのメンバーが千秋たちに負けてちょっとがっかりしているとき、そのほかの人たちがいろいろな思いに駆られているとき、のだめは着ぐるみを脱ぎ捨て、「ピアノを弾かなきゃ――!!」とムキャーと叫びながら自分の部屋に向かうのだった。そしてそのまま寝食も忘れて千秋の弾いていたピアノ協奏曲を引き続けるのだが、そこに夢かうつつかミルヒー(シュトレーゼマン)が現れる。そして、おもしろいラフマニノフだけどそれではオーケストラとは合わせられないと言う。ミルヒーはのだめに「もっと音楽に正面から向き合わないと 本当に心から音楽を楽しめまセンよ」と言う。そして、そろそろ時間だから行かなくては、と去っていく。

 涙と共に目が覚めると、のだめはピアノの前で眠っていた。そして夢を見ていたのかと思うと、ミルヒーの時計を握りしめているのに気付く。ミルヒーは確かにのだめに別れの挨拶をしに来ていたのだ。

 一方、千秋が目を覚ますと、ホステスの群に取り囲まれて眠っていた自分に気付く(笑)。学園祭以来、巨匠に六本木、京都、温泉、そしてまた六本木へと連れ回されて巨匠のスイートルームに流れて着いてきていたのだった。

 巨匠はすでに秘書のエリーゼに連れて行ってしまわれていた。そして千秋の胸のポケットには巨匠のメモが残されていた。クリスマスに発売されるグラビアアイドルの写真集を送ってくれ……(笑)

 また一方、千秋の元彼女の多賀屋彩子はひょんなことから千秋が今日のレッスンを風邪で欠席する、ということを知る。

 風邪薬や食料を買い込んで千秋の部屋に行ってみると、千秋はやっと家にたどり着いたばかりのところだった。風邪ではなく二日酔い。

 そしてオペ研の「コシ・ファン・トゥッテ」について千秋は彩子に的確だが辛辣な批評をして風呂場へ。彩子は付き合っていた頃、ケンカばかりしていたことを思い出していた。いつでも音楽が最優先の千秋。音楽の前では彩子も他人も平等な千秋。自分が歌をやめれば、千秋ともうまくやっていけるのではないかと寝室でベッドに横たわり、思いを巡らす。

 風呂から上がった千秋は彩子がいないのを見つけて帰ったと誤解する。そこへ現れたのが、変わり果てた姿ののだめ……髪はぼさぼさ、頬はこけ、異臭を放っている……そしてSオケでピアノコンチェルトを弾かせて欲しいと懇願する。

 千秋はのだめを自分の家の風呂に入れている間に食事を作ってやる(ちなみにのだめの部屋のガスは止められ、着替えは千秋の家に忘れていった服が洗濯して用意されていた)。千秋はあんなになるまでピアノを弾き続けたのだめに心を動かされていた。

 風呂から上がってきたのだめは、食欲がないといって千秋の作った料理を食べるのを拒否する。すると千秋は「いいから食え!!」といって無理矢理食べさせようとする。もちろんのだめの身を案じてのことだ。でものだめはそれよりもまずピアノコンチェルトを弾きたいという。

 のだめの情熱に負けて、千秋は承諾する。のだめがピアノのパートを、千秋がオケのパートを弾くためにはピアノが二台あるほうがいいということで、二人は学校へ向かう。。

 一部始終を見ていた(しかも肩すかしをくらった)彩子は、のだめが千秋の新しい恋人かと訝る。美人というわけでもないし、むしろどこかおかしい。エキセントリック。

 学校の、ピアノが二台ある練習室で、二人は演奏を始める。いちばん最初の和音はピアニッシモの指定がしてあるのだが、のだめはいきなりフォルティッシモで弾き始める。要するに楽譜とはだいぶ違う演奏をしているのだ。しかもテンポが速い(テンポの指定ももちろん楽譜にはある)。さらに音が多い……作曲してるじゃないか、と千秋。

 千秋は演奏をやめるかどうか悩むが、鍵盤を叩き付けるように弾いてのだめに注意を促す。オレの音を聴け!

 そこから先はものすごい速さでの演奏が続く。超絶技巧(CDを聴けば、それがどんなにとんでもないことかが分かる)。二人の息はぴったり(これまでにも何度か出てきている表現だが、これは千秋がのだめの演奏の癖を知悉しているということだけでない、何物かを暗示しているように見える)。

 いつの間にか練習室の外には人だかりがしていて(1巻で千秋を見捨てたあのハリセン教師もその中にいた)、あまりに息がぴったりの演奏ぶりや、よく二人が一緒にいるのを見かけたという噂や、果てには同棲しているという噂が渦巻いて、正体不明の女(のだめ)が千秋の彼女、ということになってしまっていた。大誤解大会。

 彩子もその場にいて、それを聞いてしまった。

 のだめは二度続けて通しで演奏したあと、気絶(寝食も忘れてピアノを弾いていたのだから)。

 彩子はレッスンに向かう途中、ライバルの菅沼が自分の悪口を言っているのを聞いてしまう。新しい男と別れるたびに千秋の元へ戻ろうとする彩子を揶揄していたのだ。

 彩子はそのままレッスンに向かう。千秋と別れたあとも、何度か恋をした。でも他の恋人には、千秋以上の物はなかった。だから取り戻したかった。「悪いかこんちくしょ――!! (コシ・ファン・トゥッテ! それが女ってものだろう!)」と絶唱する。あまりに感情丸出しだったせいか、先生に絶賛される。でも彩子は千秋の「キミ……すごくキレイだ 「声」が」という、ずっと昔千秋に言われた言葉を噛みしめて、「わたしには歌がある――」と千秋への思いを断ち切ろうとするのだった。

 後日、千秋がのだめにSオケでピアノコンチェルトを弾けるように楽譜とCD準備してきたのだが、のだめは千秋との連弾で満足してしまっていた。千秋は割り切れない思いを抱く。というのも、のだめの潜在的能力を誰よりも認めているのは千秋なのだから。

 最後に千秋と指揮者ヴィエラとの出会いの特別編があるのだけど、もう長くなりすぎたので要点だけ。

 ひとつは、ヴィエラが12歳の千秋の中に楽器演奏者としては表現しきれない何物かを持っていることを見抜いていた、ということ。

 もうひとつは、千秋の両親が離婚することになり、母親と千秋は慰謝料としてもらったニューヨークのマンションに住む予定だった。そこでジュリアード音楽院で勉強するはずだったのだが……離婚届を出しに日本に向かった飛行機が胴体着陸、千秋は二度と飛行機に乗れない体になってしまった、というもの。

 ちょっと長く書きすぎた。すでにあらすじじゃなくなっている。しかももっと細部まで検証していくことも可能だ。それは果たして「読み」なのか、それとも「批評」なのか。批評だとしたら何かが足りない。

 やっぱり量をこなしていくしかないだろうな。

 曲目リスト

・ガーシュイン ラプソディ・イン・ブルー

・ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番ハ短調作品18

・モーツァルト オペラ コシ・ファン・トゥッテK588

・ベートーヴェン 第5番ハ短調作品67「運命」

・チャイコフスキー 交響曲第6番ロ短調作品74「悲愴」

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