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2005.08.11

Kamikazeに関する二、三の考察

 日本の夏、戦争回顧の夏、ということで、Kamikazeについて私の知っていることをいくつか書いて、それから今盛んに行われている自爆テロとの関係について考えてみたいと思う。

 私はKamikazeについて二つの側面から直接あるいは間接的に話を聞いたことがある。

 小学校の時の担任のひとりはKamikazeの隊員だった。あと数日戦争が長引いていれば死ぬ運命にあったらしい。鶴田浩二(といってももう知らない人の方が多いかもね)みたいな立場にいた、ということだ。

 私たちに話したのはそれだけだ。たぶん私たちが幼かったからだろうし、あるいは語って聞かせたくなかったのかもしれない。今となっては分からない(すでに他界された)。

 もうひとつは、私の友人には何人かいわゆる帰国子女 がいて、そのうちの一人が話してくれたことだ。

 彼は小学生の頃アメリカに住んでいたのだが、そのときの担任に太平洋戦争を体験した先生がいた。別に彼が日本人だとかそういうことは抜きにして、Kamikazeの恐怖について語ったことがあるという。

 その先生がKamikazeの謂われを知っていたかどうか分からないが、たぶん知らなかっただろうし、知っていようがいまいがその先生の体験に大きな違いが生じたとは思えない。

 いまでもアメリカではある一定以上の年代の人たちには、Kamikaze(「神風」ではない)という言葉の意味するところは知られているはずだ。あるいはもっと一般化しているのかもしれない。でなければNASAが観測衛星を彗星にぶつかるのを覚悟で接近するというミッションを"Kamikaze mission"なんて呼ぶはずがない。

 さて、その先生はアメリカ海軍に従軍していて、Kamikazeを目の当たりにした。

 実際にはKamikazeが効果を上げたのは最初だけで、アメリカ海軍はすぐにすべての艦船に大量の高射砲を設置し、特殊な弾丸(当たらなくてもある一定の範囲に物体があることがわかると破裂して損害を与える)を開発、実戦に配備していたので、Kamikazeのほとんどがその使命を全うすることなく撃墜されていた。

 その先生はそんな状況の下で艦船に乗っていて、Kamikazeがこちらに向かってくるのを見たという。それが限りなくゼロパーセントに近い確率でしか自分の乗っている艦船にぶつかる可能性がないと分かっていても、ものすごく恐ろしくて、戦争が終わって教師として彼に教えていた頃でも、ときどき悪夢に見るほど強烈な体験だったという。

 伝言ゲームになってしまっているので確実な言葉ではないが、要するに「得体の知れない恐怖」を感じていたということのようだ。つまり、自らの身をを挺して国を守っていた軍属という私たちの認識(正確には「私」の認識だが)とはまったく違うものとして受け取られていたのだ。

 話は変わるが、自爆テロの起源がどこにあるかと考えたとき、それがKamikazeにあるような気がしてならないのだ。

 私は歴史にはてんで疎いのだが(なら語るなよ、と自分でも思うのだが)、たとえば殉教というものは自らの信じるもののために殉じることであり、誰かを殺めることではないし、実際そのように行われてきた。

 また、十字軍は非常に暴力的な集団だが、死を前提として目的を達成しようとしていたわけではない。また、殺人教団なんてのもあったらしいが、殺すのが目的であって自分が死ぬことを前提としていたわけではない。

 ではKamikazeの起源はどこにあるのか。で、それは『葉隠』の、「武士道というは死ぬ事と見付たり」にあるのではないかと検索を掛けていて、「松岡正剛の千夜千冊」に行き当たった!

 どうやらそれは『葉隠』の誤読にあるらしいのだ。というか、そういう言葉だけが一人歩きしてしまったのではないか。比較的難解な思想というのはいつでもそういう運命にある(ニーチェの「神は死んだ」とか)。

 でも本当は難解なのではなく、読者の怠惰によるものではないのだろうか。だとしたら、誤読というのは罪なものであると言わざるを得ない。

 自爆テロの起源についてはいずれ考えてみたいが、どうしてもそのモデルがKamikazeにあるように思えてならないのだ。というのもほとんどすべての事柄は新規に発明されたものではなく、何かもデルがあってそれをなぞったり改変したりするものだからだ(歴史とはそういう連鎖のことを言うのではないのか?)。

 で、私の知る限りにおいてKamikaze以外にそのモデルとなるような有名な事象というのは見つからないのだ。

 ただし前述した通り、私は歴史に極めて疎いので、もしそういう何かもデルになるようなものをご存じの方がいらしたら教えていただきたい。

 でももしKamikazeと自爆テロが繋がるのであれば、誤読とはなんと恐ろしいことだろうか。文字通り言葉が人を殺しているのである。

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