雪と微熱
お昼頃目を覚ましてカーテンを開けたら雪が積もっていた。何か羽織ることさえ忘れてベランダの雪の、きれいそうなところを、さくっと掬って、掌が凍りそうになるほど冷たいのも無視して食べた。
東京なのにパウダースノー。道路にはなかなか雪が積もらない。つまんない。
簡単な食事をしてからもう一度ベッドに潜り込む。眠いけど眠れない。カーテンを閉めていてもガラス越しに寒さが部屋の中に流れ込んでくる。エアコンじゃ足りない。それにエアコンは寝室にはない。
自分の体臭のしみ込んだベッドと布団の間に挟まって、夢を見ることを願う。
気が付くと部屋の中は雪明かりに照らし出されていて、微熱っぽい。風邪を引いたのかもしれない。インフルエンザじゃないといいけど。そう口に出してみると悪寒の錯覚が。
暗くなってからアパートの部屋を出た。玄関の前に男の人の足跡が半分埋もれていた。いったい誰が雪の日に私を訪ねてきたのか。
階段を滑り落ちないようにゆっくり降りて、郵便受けの前まで行くけど開けるのが億劫でやめにする。手袋を取るのも嫌だったし。
道路は轍の跡がシャーベット状になっていた。ぐしゃぐしゃシャーベットを踏みつぶしながら歩くんだけど、不思議と寒くはなかった。