『ウタイツガレルウタ』種ともこ
デビューの頃からずっとファンをやっている種ともこのセルフ・カバー・アルバム。
めちゃくちゃいい。って小説書いてるヤツがこんな表現でいいのか? いいのだ。
なんていうか、過去に向かっていないかといって未来を向いているかというと、ちょっと違うと思う。「今」を切り取ったような、そんな感じ。というか、種さんはずっと昔からいつでもそうだった。
未来を向いていない、というと否定的に取られるかもしれないので書いておくと、いつでもそのアルバムに全力を注いで、そのプロセスが現れている、といったらいいのか。現在進行形。過去と未来を繋ぐ「今」といえばいいのかも知れない。
種さんの曲には実はものすごく好きな曲と、普通に好きな曲と、あんまり好きじゃない曲があったりする。ものすごく嫌いな曲は、ない。それだったらファンやってないよ。
このアルバムにはその苦手な曲が何曲か入っているのだが(どの曲かは書かないよ)、そのコトバの発し方でぜんぜん違うコトバになってしまっていて、曲自体も、まるで違ったものになってしまっているのだ。
アレンジもあるけど、種さんの歌い方にすべての秘密は隠されている。
失礼なことを書くけど、種さんってあまり器用な方ではないと思うのだ。でも、それだからこそ、その発音されたコトバひとつひとつに種さんのタマシイが宿る。
歳を重ねられるごとに、それがものすごい強度を持つようになっているような気がしている。
最初、このアルバムはヘビーローテーションで聴くべきアルバムではないと考えていたのだけど、知らないうちに何度も聴いているのであった。
いわゆる愛聴盤とか、そういうのを越えたスペシャルな一枚なのかもしれない。それは出来不出来とはまた別の問題。
でも残念ながら、ものすごく良くできたアルバムであったりするのだ。どうしたらいいのだろうか。
種さんのことを知らないどこかの誰かがなんの先入観も持たずに聴いてくれたら、一ファンというよりも、わたしがとても嬉しい。