心ならずも
都内某所の住宅街を彷徨。路面は凍結し、寒風吹き荒び、嗚呼、わたくしの命運もここまでかと何度か思った。というのも、そのあたりの土地勘が全くないわけではないのだが、そのあたりは迷宮として知られている地域なのであった。
不可解な交差点、倒壊寸前の納屋、大量の鶏、地下世界からやってきたような大熊猫と犬の遊具が置いてあるだけの迷宮の行き止まりにある公園、車に乗っていたら脱出不可能な一通、他の道路につながっているようにしか見えない行き止まり、太い道路と細い道路が複雑に交差し、月に一度はサバトの集会場と化す月極駐車場……。
迷宮の果てのタアミナルの喫茶店で暖を取るも、暖房の利きが悪くコートを脱ぐことができない。北風と太陽の呪いか。チョコレェト・ケエキを切り刻む手も凍えんばかり。コーヒーを飲むことでやっと暖を取る。
別のタアミナルに移動し、マック・ドナルドへ寄るも、やはり寒く凍えんばかり。マック・シェイクを啜りながら嫌いなはずのバス・ルームに思いを馳せる。そのくらいわたくしの身体は凍えていた。